物性を活かす

bon-naoto2006-08-08

物理学に「慣性の法則」というのがある。一度運動を始めた物体は、空気や摩擦など、外力が加わらない限り、ずっと運動をし続ける。実際には、地球上では、摩擦抵抗や空気抵抗があるために、この法則どおりに物体が運動し続けることはないが、しかし、これは地球上に存在するものの大原則であることは間違いない。


身体の動きでいったら、この法則に逆らう動きとは、「せっかくついた勢いを無駄な力を入れることにより、殺してしまう」ことがこれにあたる。まことに勿体ない話だ。放っておけば、スムーズに動けるものを、人間の雑念というか、邪念というものが邪魔をしてしまう。そして、自分では、すごく頑張っているつもりでも、たいして効果はあがらないものである。


この法則を最大限に利用できれば、おそらく、自分では、力を使っている感じは殆どしないという感覚になるはずだ。達人は、ほぼ間違いなくこういったコメントをする。力の発生源も、重力があるから、そのままそれにまかせて落っこちれば、床からの反力で上に向かう力が生まれるので、自分で頑張らなくてもよい。


それから、達人から「自分の技は神秘的なものではなく、物理的なもの」ということもよく聞かれる。自分の身体で分かっていれば、やっぱり「物理的」という言葉が、ふさわしくなるのではないか。*1

*1:写真はAMANO KAZAOTO 高画質館