ただやることの難しさ

日本韓氏意拳学会 Official Web site

前から気になっていた韓氏意拳の体験講習会に行ってきた。講習会では「形体」と呼ばれる、体操のような動きと、站樁の初歩的な動きを教わった。


求められているのは、ひたすら「自然な動き」である。当然ながら人間は生物であるので、自然の一員であるのだが、やっかいなことに、頭脳によって思考する能力を持っている。これが自然な動きを妨げるのだ。「自然にやろう」と考えて行うのは既に自然ではない。それは、人間が頭で考えて作り出した何物かである。


「これが正しい」と頭で思い込んでやっていたとしても、果たしてそれが自然なものかどうかは保証できない。全然別のものである可能性もある。


でも、人間が頭で何を考えようとも、身体を持って自然の中に存在している事実は変えようがない。であれば、人間の中にある自然と外にある自然が最大限にマッチすれば最高の能力を発揮できるだろう。


韓氏意拳では、基本となるいくつかの動きをとおして自然を「体認」していく。動きのポイントは「ただやる」ということ。これはシンプルではあるが、最重要のポイントでもある。


人間は、一度上手くいくと、次にやるときに、その「上手くいった」という経験によって、その感じを再現しようとしてしまうのだ。そうすると頭で考えた全然別の動きになって自然さは失われる。また、頭でそのイメージを作ってからやるのも違う。あくまでも大事なのは「ただやる」ということなのだ。


思考によって自然が妨げられる自分の姿を改めて感じた体験だった。