踵で呼吸

最近、野口体操教室では、呼吸のやり方がテーマとなっている。その中でこんな言葉を教わった。中国のことわざらしい。


「衆人は喉で呼吸し、哲人は背骨で呼吸し、真人は踵で呼吸する」


普通の人(衆人)は「喉」で呼吸する。これは、確かにそうである。一般的な呼吸のイメージといってよいだろう。


そして、それよりも高いレベルの人(哲人)は「背骨」を使って呼吸するという。肋骨は背骨の胸椎についているから、背骨が柔らかく使えれば、肋骨も自由度が増す。また、横隔膜も腰椎についており、背骨が楽になれば、横隔膜が使え、空気の出入りが楽になるということだろう。いわゆる腹式や胸式呼吸が楽にできるということか。


そして、さらに上のレベル(真人)は「踵」で呼吸するという。もちろん実際には、踵から息を吸うわけではなく、意識がそこにあるということだ。ここでは、「踵」と言っているが、これは解剖学的な意味での踵ではなく、おそらく足裏全体のことを言っているのではないか。足裏がしっかりと床(地面)を捉えている状態での呼吸ということだろう。



足裏は体重を支える部分である。ここが床(地面)にしっかりとついているということは、余計な力が抜けて、その重さを足裏で受け止めているということ。すなわち身体のバランスが取れて理想的な状態であるということである。


また、野口体操では、「地球の中心」に働きかける動きがでてくるのだが、その地球の中心と人体との接点になるところが、この足裏なのだ。足裏を通して地球の中心からエネルギーをもらう。足裏は関所の様なところなのである。


いわゆる腹式呼吸でも足裏を使うのと使わないのとでは、その深さや気持ちよさも全く異なる。椅子に座って呼吸を使ってリラクゼーションなどをやるときでも、足を上げるのと、床につけておくのでは呼吸が全然違ったものになる。面白いものだ。