生涯現役

競技スポーツでは、年齢による限界というものがどうしてもある。野球やサッカーも20代や30代前半の選手が中心で、30代も後半になると引退する人が多い。40でやっている人はまれで、50になっても現役バリバリという人はいない。


競技スポーツという文化の性質上やはり無理があるのだろう。人間がもともと持っている「体力」というものがあり、それは加齢とともにどうしても衰えていく運命にある。現役を引退した後は、指導者や組織を運営する側に回る。


しかし、人間が死ぬまで追求し続けることができ、そして、経験を積めば積むほど上達するという文化があってもよい。いや、むしろ、その方が本筋というものではないか。


実は武道、武術の世界には、こういう話が多い。いわゆる「達人」という存在である。「70歳を超えてようやく力が抜けてきた」とかそんな話もしょっちゅう出てくる(もっともこういう人は若い頃にも相当な修練を積んだに違いない。その頃と比較して「力が抜けた」言っているのである)。それにしても、年齢は関係ないのである。こういう文化は素晴らしいと思う。


また、私の尊敬するアスリートに、スキーヤー三浦雄一郎さんがいる。70歳にして、エベレストに登頂したのは素晴らしい。ちなみに、お父さんの三浦敬三さんも、99歳でモンブランを滑った。その姿勢には敬服するしかない。


こういう話は本当に勇気づけられる。すきま風に当たりながら若かりし頃の思い出にひたり「俺もあの頃は輝いていたなぁ」などと過去を哀愁たっぷりに振り返るような老人には、私は死んでもなりたくない。死ぬ瞬間まで己を高め続けていきたいと思う。死ぬ間際に、自分が生きてきた映像が走馬灯の様によみがえる。その何十年かの人生を一瞬で振り返った後に「ふっ」と微笑んで死んでいきたいものだ。


種目は、武道やスキーだけではなく、他にもいろいろあるだろう。ルールによって勝敗が決まるような種目は、難しいかもしれない。身体と心の中間にある微妙な領域が中心となる文化ならいいかもしれない。それから、やっぱり最終的には「自分がどれだけ楽しめるか」ということが一番大事だろうか。