動きは下半身から

結局のところ、動きの基本を作り出すのは下半身だ。運動にもよるが、座って手先だけ動かすような運動はともかくとして(それでも下半身は重要である)、重心の移動を伴う運動の場合、その重心移動を生み出すものは、上半身ではなくまぎれもなく下半身である。


下半身が安定していることで上半身が安定する。そうすると、いかにスムーズに重心の移動が行えるかということが重要となってくる。太極拳の対人練習である「推手」では、二人で組んで、力の探り合いや、崩し合いを行うのだが、どうしても触れている手だとか、上半身のことばかりに意識が行きがちになる。


前に出ようとするときに、下半身を固定したまま、胴体や、肩や、腕が前に出ようとするのでは、大して前方にも動くことはできないし、また、生み出される力も大したことはない。やっている本人は結構やっているつもりになるだろうが、効果は大したことはないのである。下半身と連動せずに、上半身だけ何とかしようとしてもどうにもならないのだ。


下半身を使うからこそ、前に進むことが出来るし、胴体も前後に大きく動くことができる。そうすると胴体の重量を運動に使用することができ、生み出されるエネルギーも大きくなる。


推手では、「重心を自分でコントロールできているうちは、相手に崩されることはない」ということを考えると、「如何に下半身が上半身を支えているのか」ということを認識することがポイントとなるだろう。


「人間の衰えは下半身から」といわれるが、当然の理であろう。足腰がしっかりしていれば、精神的にも気丈で安定していられる。