プレゼンスを広げていくこと

「プレゼンス」とは、心身が統一されていて、現在の自分のあり方に明確に気づいている状態のこと。身体を感じながら、その重さを微妙にコントロールしていくと、プレゼンスに入っていける。トレガー・プラクティショナーのジャック先生から教わった重要な概念である。この状態でボディワークをすると、自分の身体の動きもよく分かるし、タッチをしたときの相手の状態もよく分かる。


心があらぬことを勝手に考え出したり、空想の方に行っちゃったり、過去に起こったことを思い出して心が乱されたり・・・・・・とかく心とは思うようになりにくいものである。


そんなとき、身体の感覚を思い出し、プレゼンスの状態を思い出してみる。そうすると頭が勝手に先走るということがなくなる。常に今のありのままの状態を意識できるようになるのだ。


ただし、放っておくとまた勝手に頭がほじくり返していたりするので、そこでまた、プレゼンスに戻っていく。やっぱりこれにもレベルがあるようで、


1−プレゼンスの深さ→どれだけ現在の状態を感じ取れているか
2−プレゼンスの連続性→その状態がどれだけ長く持続できるか
3−プレゼンスの入りやすさ→どれだけその状態にスムーズに入ることができるか


といったことがあげられるだろう。もっとも3などは、「速くプレゼンスにならなくては」と焦ってしまうと、逆にその状態から遠のいてしまったりするので、注意が必要だ。自分の能動的な努力や強い意志が逆に妨げになったりすることもある。常にプレゼンスにいることができること、外れてもすぐに戻れることを「覚りの状態」というのかもしれない。


太極拳はプレゼンスのよい練習となる。ゆっくり身体を動かしていくのだが、そのことにより、自分の身体の状態がどうなっているのかが分かる。速く動かしていたのでは、ここのところはよく分からないだろう。ところが、面白いもので、動かしている途中で連続している意識が途中で飛んでしまったりする。特に、現在の自分に集中できずに、自分の頭にインプットされている運動パターン(クセ)が出てしまっているときなどは、そうである。それはかたちだけの動きであり、中身のない動きとなってしまう。


本当にプレゼンスの状態になったときは、心身が一体となっている。「心身一体」としか言えないのだと思う。ここになって初めて身体と心がそのまま一致すると言える。思えば野口体操もそういうものであったはずだ。野口体操も動きで考えていたが、意識の面からもう一度捉えなおしてみよう。