原初生命体

bon-naoto2006-01-05

野口体操に「原初生命体」という概念が出てくる。野口三千三先生の著書にも「原初生命体としての人間」という本がある。「原初生命体」とはアメーバのようなものに近いかもしれない。進化していない、もともとの生命の姿である。


私が初めて体験した野口体操のレッスンも「原初生命体としての動き」からであった。これは「にょろ転」と呼ばれる動きで、自らの身体を水の入った袋のように変形させながら動いていく。


ポイントとなるのは「足の裏」と呼ばれているが、いわゆる足の裏ではなく、「身体と床との接地面」のことである。野口体操では、「身体の何処でも足の裏になる」と考えている。例えば、背中が接地していれば、背中が「足の裏」になるのだ。この「足の裏」が滑らかに移動していくところがポイントとなる。「足の裏」の意識が甘いと、動きが途切れてぎこちなくなってしまうのだ。


原初生命体は、身体が分化していない。「脚」だの、「腕」だの、「肩」だのに分かれていないのだ。身体の何処でも自由自在に変形し得るのである。思うに人間は、生命としては進化の極にあるが、それ故に「分化」や「特化」もし過ぎている。「肩はこう使うものだ」「脚はこう使わなければならない」といった先入観に支配されすぎているのではないか。


もともと、原初生命体だから手も脚もないのだが、「そこからたまたま手が出ている」とか「脚が出ている」という考えの方がいいように思う。ひと纏まりとしての身体をもう一度見直してみたい。*1

*1:写真は「toshiの写真箱」