創造のスピリット

今日の芸術―時代を創造するものは誰か (光文社知恵の森文庫)

今日の芸術―時代を創造するものは誰か (光文社知恵の森文庫)

岡本太郎「今日の芸術」を読む。その中の太郎のフレーズ。


今日の芸術は、
うまくあってはいけない。
きれいであってはならない。
ここちよくあってはならない。


芸術の本質とは「創造性」にある。これまでの自分にしがみつくことなく、ダイナミックに生成、発展を繰り返していくことだ。


何か、芸術というと高尚なことのように思えるが、経験を何年積んだとかは一切関係なく、自分を創造的にすることはできる。クリエイティブに自分を変革していくことはできるのだ。そこに素人か玄人かの区別はない。その文化の技法に習熟することも確かに必要だが、でもそれで十分かというとそうではない。


創造的に世界に関わろうとしたなら、「自分が世界といかに向き合うのか」という自己確認、自己認識が不可欠となる。そして、そこに始めて「責任」というものが発生する。自分の価値観や行動を自分で決定するという責任、人の価値観をそのまま鵜呑みにするのではなく、自分の感覚を元にした自分の価値観で行動するという責任である。


どうして、芸術は「うまく」「きれいで」「ここちよく」あってはならないのか。それは、「うまい」や「きれい」が人の価値だからだ。人が決めた価値観を疑いもせずに自分で取り入れて、それを尺度に判断することになるからだ。むしろもっと違ったもの、心がえぐられるようなものって、決してきれいでも、変にここちよいものでもない。自分を変革させるヒントとなるものは、もっと違った形で現れるものだ。それを避けていては成長もない。