東京国際女子マラソン

を国立競技場に見に行った。テレビには映るものの、マラソンは地味な競技である。選手は、たいへんな思いをして走っているが、別にきらびやかなスポットライトが当たるわけでもない。また、沿道から一般市民が声援を送れるスポーツというのはこれしかないだろう。国立競技場も無料で観戦できる。世界のトップレベルのパフォーマンスがすぐ間近で見られるのは、素晴らしい。


レースは、野口みずきがパワーあふれる走りで、終盤で後続をぶっちぎって大会新記録で優勝した。アテネ五輪の金メダリストらしい圧巻のレースだった。競技場に入ってからのラストスパートもすごかった。高橋尚子もそうだが、世界のトップに立った人というのは、その人しかないものをやはり持っている。マラソンランナーでは、高橋が好きだったのだが、今日の野口の走りを見て、野口も同じくらい好きになった。高橋には、北京を目指して頑張って欲しいと思う。


さて、野口がゴールしてから約30分後、タイムが3時間に近くなるところで、競技場にどんどん選手が入ってくる。招待選手以外にも一般参加の選手もいるから、全参加者は結構な数にのぼる。テレビでは1、2、3位くらいまでしか映らないから、こんなにマラソンって参加選手がいるんだと少し新鮮に感じた。



市民ランナーは、競技専門の選手とくらべて、練習時間もまとまって取れないだろうから、時間をみつけて仕事の合間に走っている人が多いのだろうが、それでもフルマラソンを3時間で完走できるのは、きちんとした練習がなければ無理である。



競技で成績を残すことが運動の本質ではない、と自分は思っている。結果を追い求めて、プロセスを無視するやり方には問題も多いと思う。しかし「競技があるから真剣になる」という側面もやはり否定できない。「たかがかけっこじゃないか」、といってしまえばそれまでかも知れないが、でも、どんな種目や文化であれ、人が真剣に打ち込んでいるものからは、かならず伝わってくるものがある。そんな真剣に頑張っている人たちを斜に構えて見たくはないのだ。


ホームページを見たら今日のレースには600人が参加したそうだ。優勝した野口だけではなく、みんなそれぞれ実力は違えど、真剣にレースを楽しんでいた。トップになった人はもちろんすごいのだが、レースに参加した人たちは全員素晴らしいと思う。


「あの人たちの持っていた真剣さで、では自分は何をできるだろう」、と帰り道に自問自答したのであった。