身体の内面

一般に、「動きの指導」というと「外面」=すなわち外側から見た身体の形態や動作についてのものとなり、「内面」=身体の内部について指導されるということはあまりない。外から見た視点では、手や足の位置や角度とか、動かし方という方が目に付きやすく、言語化しやすいためだろう。また、教えられる方も、主にそれらの情報を基にして、自分の動きを省み、修正していくことになる。


しかし、表面的に「外面の動き」として現れる前に「内面の動き」というものが存在する。これは、主に身体の内部感覚を基にした「動き」だ。身体の内部感覚とその運動についてのイメージが結合したようなものである。


これを表現するのは、なかなか一筋縄ではいかない。外面の動きならば、「手」とか「足」とか「腰」といった具体的な身体各部の名前があり、言語化することは容易だが、「内面」を表現する具体的な語彙は非常に乏しいのではないだろうか。どうしても内面的なものは、抽象的なものとならざるを得ない。あえて言葉で表すとすれば、「こんな感じ」という表現になる。これまでの経験から、自分が蓄えてきたイメージを駆使して、それに例えるようなものだ。


ただし、言語化が難しいからと言って、これは本当は無視できるようなものではなく、たいへん重要なものなのだと考えている。むしろ、こちらの「内面」の方が川の上流で、具体的な外面の動きの方は下流であるといってよい。本質をつかみたければ、表に出る前の「運動」について、敏感に感知する必要があるのだ。どうしても普段は見過ごされがちな、一見「どうでもいい」と思われるような身体の内部感覚に本質が隠されている。